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【申込終了】第121回HGPIセミナー「グローバルヘルス課題としてのAMR -低中所得国と高所得国の視点を包摂した抗菌薬のアクセスとは-」(2023年10月30日)

抗菌薬は現代医学において重要な役割を担っており、感染症、がん、母子保健等の医療を支えています。それゆえ、薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)の増加は、裕福な国にも貧しい国にとっても極めて大きな脅威です。毎年、AMRが原因で127万人が命を落としていると推定され、その数はマラリアやHIV/AIDSによる死亡者数をはるかに上回ります。特に、低中所得国(LMICs: Lower Middle Income Countries)はこの負担の矢面に立たされており、AMRによる直接死亡者数の90%近く、5歳未満の子どものAMR関連死亡の99.5%以上がLMICsで発生しています。それと同時に、LMICsは抗菌薬が手に入らないというだけの理由で「治療ができない」感染症にも直面しており、抗菌薬へのアクセス確保は喫緊の課題です。

世界的な健康危機であるAMRに対処するためには、地理的、経済的、産業あるいは専門分野の境界を越えた連携が必要です。低中所得国(LMICs)含む全ての人々が抗菌薬を手に入れて、時間や場所を問わず、命を救うための治療が適切に行われるためには、新規抗菌薬のパイプラインの回復と維持、既存抗菌薬の責任ある使用の必要性に世界が合意し、協力して行動することが不可欠です。一方で、AMRは複雑で政治的にも慎重な対応が求められる課題になりつつあります。この性質を考慮すると、「グランドバーゲン(包括的な交渉・合意)」の考え方を導入して、抗菌薬の適正使用とイノベーションを優先する高所得国(HICs: High Income Countries)と抗菌薬へのアクセス確保を優先する低所得国(LMICs)双方の利益のバランスをとる必要があります。

今回のHGPIセミナーでは、米国のシンクタンクであるグローバル開発センターでシニアフェローを務めるRachel Silverman Bonnifield氏をお迎えします。2024年、国連総会(UNGA: United Nations General Assembly)はAMRに関する第2回ハイレベル会合を開催します。2016年の第1回に続き、国連総会はあらゆる立場の国や地域、組織が集まる世界的な議論と交渉の場になるでしょう。来たる国連総会ハイレベル会合を見据えながら、低中所得国(LMICs)、高所得国(HICs)、産業界等の利益のバランスをとることで、持続可能な抗菌薬のアクセス確保を目指す「グランドバーゲン(包括的な交渉・合意)」の在り方をお話いただきます。また、G7による新規抗菌薬への投資から得られる潜在的な高い投資収益率(ROI: Return on Investment)についても触れながら、あらゆる立場の国や地域、組織が恩恵を受けることができる持続可能かつ公平なアクセス確保の仕組みを検討していきます。

 

【開催概要】


■登壇者プロフィール:

Rachel Silverman Bonnifield 氏(世界開発センター シニアフェロー)
現在の主要な研究テーマは、グローバルヘルス製品の調達とアクセスモデル、グローバルヘルスのイノベーションとデリバリーに向けたインセンティブ、薬剤耐性(AMR)や子どもへの鉛中毒の蔓延等の顧みられないグローバルヘルスの危機、パンデミックへの備えと対応のためのファイナンシング等である。CGDでの職務に加えて、世界銀行に対するコンサルティング業務も幅広く実施しており、最近はプライマリ・ヘルスケアの将来に関する最新のフラッグシップ・レポートも作成した。また、国家民主研究所(NDI: National Democratic Institute)で、コソボ共和国における民主主義とガバナンスの強化プログラムを支援した経験をもつ。ケンブリッジ大学で公衆衛生学哲学修士号(優等)、スタンフォード大学で学士号(優等)を修める。

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