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【開催報告】地方自治体の公衆衛生専門職向けパブリックヘルス・セミナー「地域の健康を守るためのAMR対策 ―公衆衛生の視点から」(2025年7月16日)

※当日資料を掲載しました。
※報告書は後日公開予定です。

日本医療政策機構およびAMRアライアンス・ジャパンは、7月16日(水)に、地方自治体の公衆衛生専門職向けパブリックヘルス・セミナー「地域の健康を守るためのAMR対策 ―公衆衛生の視点から」を開催いたしました。今後、地方自治体の公衆衛生専門職等が、AMRの基本的な知識を深め、自身の担当業務とAMR対策の接点を見出し、地域住民への啓発・学修支援、多分野の関係機関との連携を通して、地域におけるAMR対策を推進していくことが期待されます。

また、本セミナーでは地域におけるAMR対策の発展にさらに貢献するべく、登壇者のご厚意のもと、各自治体の取り組み事例等に関する当日資料を掲載いたしました。


【開催概要】

 

【プログラム】(敬称略)※当日資料は以下の各タイトルをクリックするとダウンロードできます。

第1部(ハイブリッド形式)  
13:00-13:10 開会挨拶・趣旨説明  
  河野 結(日本医療政策機構/AMRアライアンス・ジャパン)
13:10-13:40 講演1「いま自治体に求められる薬剤耐性対策
 
  藤友 結実子(AMR臨床リファレンスセンター 情報・教育支援室長)
13:40-14:10 講演2「人と動物のつながりから考える、地域のワンヘルス・アプローチ  
  浅井 鉄夫(岐阜大学大学院連合獣医学研究科 教授)
14:15-15:00 事例報告「地方自治体における公衆衛生活動 ―AMR対策の実例」  
  徳島県におけるワンヘルスの推進について~地域・組織・部署横断的な人獣共通感染症対策~
森 彰倫(徳島県 生活環境部 安全衛生課 食品安全・生活衛生担当 課長補佐)
  福岡県におけるワンヘルスの取組
池田 加江
(福岡県 保健医療介護部 ワンヘルス総合推進課 参事補佐兼研究等拠点整備係長)
  山形県村山地域AMR(薬剤耐性)対策ネットワークの活動報告
森 福治
(山形県庄内保健所 医療監(兼)保健所長)
  みなと地域感染制御協議会(MICC)における薬剤耐性対策の試み
北野澤 昴
(みなと保健所 地域医療連携担当課長)
  東京都内保健所における結核対策を含む既存事業の再設計の取り組み
長嶺 路子
(板橋区保健所 所長)
  姫路市における普及啓発の取り組み
松田 明展
(姫路市 健康福祉局 保健医療部 地域医療課 課長)※オンライン参加
   質疑応答
第2部(対面形式・会場のみ)  
15:15-16:15 パネルディスカッション「自治体職員に求められる役割 ―明日からできるAMR対策」
  パネリスト(五十音順):
浅井 鉄夫(岐阜大学大学院 連合獣医学研究科 教授)
池田 加江(福岡県 保健医療介護部 ワンヘルス総合推進課 参事補佐兼研究等拠点整備係長)
一森 彰倫(徳島県 生活環境部 安全衛生課 食品安全・生活衛生担当 課長補佐)
長嶺 路子(板橋区保健所 所長)
藤友 結実子(AMR臨床リファレンスセンター 情報・教育支援室長)
森 福治(山形県庄内保健所 医療監(兼)保健所長)
モデレーター:
渡部 大地(日本医療政策機構 シニアアソシエイト)
 
16:15-16:20 閉会挨拶  
16:20-17:00 ネットワーキング  

 

■背景

近年、薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)は世界的に深刻な公衆衛生上の課題となっています。日本政府は2016年に第1期となるAMR対策アクションプラン(2016-2020)を策定し、現在は第2期(2023-2027)としてAMR対策が進められています。このアクションプランも後押しとなり、各組織でAMRに関する知識や理解を深めるための啓発・学修支援活動が展開され、医療従事者への教育的介入は一定の成果を上げています。しかし、市民の抗菌薬やAMRに対する理解はまだ改善の余地があり、毎年実施される国民のAMRに対する意識調査でも「抗菌薬がウイルス性感染症に有効である」との誤解が約半数にのぼります。この状況では、医療従事者が抗菌薬の適正使用を推進しても、市民の理解が伴わないことでAMR対策の効果が限定的になる恐れがあります。

AMRに関する啓発・学修支援活動は、これまで主に市民を直接の対象として、啓発キャンペーンやメディアを通じた活動が展開されてきましたが、これまでの取り組みを一層効果的に連携させ、さらなる成果につなげるための新たな方策が求められています。こうした中、地方自治体の公衆衛生専門職、特に保健師は、市民の健康意識向上や感染症予防に関わる専門職であり、AMR対策においても重要な役割を果たすことができる存在です。例えば、抗菌薬を多く使用する層である20~39歳の子育て世代に対し、臨床現場以外の場で情報提供を強化することが可能です。姫路市では、保健師が乳児家庭全戸訪問事業(こんにちは赤ちゃん事業)において生後4か月までの乳児のいる家庭を訪問する際、AMR対策の内容を盛り込んだガイドブックを配布し、AMRの周知を進めています。また、公衆衛生専門職は診療所や薬局等の医療機関等に属する医療従事者とは異なる立場から、農業や食品安全、下水道施設や介護施設など、多様な分野と関わることができる存在として、地域全体を包括したAMR対策の中心的な役割を担うことができます。公衆衛生専門職がAMR対策を推進する環境を整備することは、長期的なAMR対策の啓発・学修支援において極めて重要です。

そこで、こうした公衆衛生専門職がAMR対策により積極的に関与できること、地域や業務の特性に応じたAMR対策が進むこと等を目指して、ハイブリッド形式のセミナーを開催いたしました。具体的には、AMRの基本的な知識と、自治体におけるAMR対策に関する事例を共有しました。また、第2部では登壇者と現地の参加者によるディスカッションを通じて、参加者が地域ごとあるいは領域ごとの課題に基づいた具体的な活動を検討できるように議論しました。本セミナーはAMR対策が多様な分野に関わることから、感染症担当者に限定せず、母子保健や精神衛生、食品管理、愛玩動物等の幅広い領域の公衆衛生専門職を対象とし、各参加者には担当する地域あるいは業務とAMR対策の接点を見出していただける機会となりました。

■登壇者プロフィール(敬称略・登壇順)

河野 結(日本医療政策機構 マネージャー/AMRアライアンス・ジャパン)
シドニー大学大学院医療政策学修士課程修了。修了後、日本医療政策機構に参画。薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)やワクチン・予防接種に関する事業を中心に担当。担当事業等を取り巻く国内外の政策課題の調査分析や各種会合の企画運営に従事。広報・アウトリーチ活動やアドボカシー活動等にも取り組む。

藤友 結実子(国立健康危機管理研究機構 国立国際医療センター AMR臨床リファレンスセンター 情報教育支援室 室長)
京都大学法学部、滋賀医科大学医学部卒業。大津市民病院、京都府立医科大学、国立病院機構大阪医療センター等に勤務。京都府立医科大学感染制御・検査医学/感染症科助教を経て、2017年よりAMR臨床リファレンスセンターに勤務。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医。

浅井 鉄夫(岐阜大学大学院 連合獣医学研究科 教授)
1989年に岐阜大学大学院修士課程(獣医学)を卒業後、全国農業協同組合連合会(JA全農)、農林水産省動物医薬品検査所(動薬検)を経て、2013年に岐阜大学大学院連合獣医学研究科教授として現在に至。JA全農では家畜(主に豚)の感染症を研究し、動薬検で家畜の薬剤耐性のモニタリングに従事して以降、動物の薬剤耐性菌に関する研究を継続している。

一森 彰倫(徳島県 生活環境部 安全衛生課 食品安全・生活衛生担当 課長補佐)
2000年徳島県庁入庁。環境部局や保健福祉部局、保健所での勤務を経て、2025年より現職。

池田 加江(福岡県 保健医療介護部 ワンヘルス総合推進課 研究等拠点整備係長)
2000年福岡県庁入庁。公衆衛生獣医師として、これまで食品衛生、生活衛生、動物愛護、鳥獣保護業務に従事。2024年より現職。

森 福治(山形県庄内保健所 医療監(兼)保健所長)
2007年富山大学薬学部卒業、2014年山形大学医学部卒業、2025年山形大学医学部医学系研究科博士課程修了、医学博士。医学部卒業後、山形県内の基幹病院で小児科医として勤務。2021年から行政へ、山形県村山保健所で新型コロナウイルス感染症対応に従事しながら医療的ケア児の災害対策などに取組む。2024年能登半島地震では山形県DHEATとして石川県に派遣。2023年から新型コロナウイルス感染症の際のネットワークを活かし山形県村山地域のAMR対策ネットワークの立上げに関与。2025年4月より現職。薬剤師、医師(医学博士)、小児科専門医、社会医学専門医、ICD(インフェクションコントロールドクター)、小児感染症学会認定医、日本医師会認定産業医。

北野澤 昴(港区みなと保健所 地域医療連携担当課長)
2006年東京都港区役所に入庁。総合支所やみなと保健所で勤務し、保健福祉支援部福祉施設整備担当課長を経て、2025年から現職。みなと保健所健康推進課長を兼務し、母子保健、成人保健、精神保健、難病対策、災害医療等幅広い業務を担当している。

長嶺 路子(板橋区保健所 所長)
東海大学医学部卒業。川崎市立川崎病院での初期研修・総合診療科勤務を経て、マヒドン大学(タイ)で熱帯医学のディプロマ(DTMH)を取得。新宿区、東京都、世田谷区、港区など複数の自治体において感染症対策や健康推進、予防対策等の業務に従事。特に世田谷区保健所では感染症対策課長、港区みなと保健所では保健予防課長、東京都多摩立川保健所所長等を歴任し、2025年より現職。日本内科学会認定内科医、ICD制度協議会認定ICD、日本公衆衛生学会認定専門家、日本結核病学会指導医、医学博士。

松田 明展(姫路市 健康福祉局保健医療部 地域医療課 課長)
1997年大阪大学人間科学部卒業。同年姫路市役所に入庁し、同市の主に保健福祉部局での勤務を経て、2025年より現職。AMR対策に関する市民への啓発事業などに注力している。

渡部 大地(日本医療政策機構 シニアアソシエイト)
神戸大学卒業後、理学療法士として地域の高齢者を対象とした臨床ケアに従事しながら、同大学大学院にて保健学修士号を取得。リハビリテーション医療をマクロな視点で捉えることに関心を深める。その後、公益社団法人日本理学療法士協会事務局にて、役員秘書業務、災害リハビリテーション推進、チーム医療推進の活動支援を担当。また、国内外の関係機関と連携し、理学療法士の国際展開を推進する新規事業の立ち上げをリードした。在職中、厚生労働省保険局へ出向し、被用者保険者向けのデータヘルス計画やコラボヘルス推進に取り組む。2024年9月より日本医療政策機構に参画し、政策提言や社会実装に向けた取り組みを推進している。

当日プログラム(日本語のみ)

 

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