【申込受付中】HGPI-慶應義塾大学 共同講義「AMR対策を考える ー 研究から政策へ、日本から世界へ」(2025年10月1日)
日本医療政策機構(HGPI)と慶應義塾大学は、「AMR対策を考える ー 研究から政策へ、日本から世界へ」をテーマに、共同講義を開催します。
薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)は、現代医療の根幹を揺るがす世界的な課題です。国内外でAMRによる感染症は増加しており、このまま有効な対策が取られなければ、2050年には世界で年間1000万人が命を落とすとの予測もあります。効果的なAMR対策を進めるためには、医療機関、薬局、研究室を越えた、社会全体での取り組みが求められています。また、AMRを含む感染症対策は自国のみでは完結せず、自国と世界の利益が隣接しているという考えに基づき、国際連携を通じて引き続きAMR対策を総合的・包括的に推進していく必要があります。
日本医療政策機構(HGPI)とAMRアライアンス・ジャパンは、産官学民の多様なステークホルダーと連携し、マルチステークホルダーによる政策提言や対話を通じて国内外でAMR対策の推進に取り組んできました。そこで、本講義「AMR対策を考える ー 研究から政策へ、日本から世界へ」では、AMR研究やAMR対策の最前線で活躍する国内外の専門家をお招きし、最新の研究成果や政策動向、現場での実践例を共有します。本講義を通じて、次世代を担う方々とともに、AMRというグローバルな社会課題の解決に向けて、研究と政策、そして国際連携の新たな可能性を探ります。
今回は、慶應義塾大学 医学部の南宮湖氏、上蓑義典氏と、GARDP(Global Antibiotic Research and Development Partnership)のジェニファー・コーン氏をお招きします。南宮氏からは、臨床研究の重要性と課題、AMR対策の今後の展望について、上蓑氏からAMR対策における検査・診断の意義や役割についてご講演いただきます。コーン氏からは、国際社会やグローバルヘルスの観点から、抗菌薬の研究開発の最新動向や低中所得国における公平なアクセスの現状と課題、そして政策的な対応策の重要性についてお話しいただきます。臨床現場や研究現場、低中所得国における実際の経験や最新の知見に触れ、意見交換を通じて、AMR対策のさらなる発展と実践的な解決策の創出に繋がる場になることを目指します。
【開催概要】
- 日時:2025年10月1日(水)18:00-19:30(開場:17:45)
- 会場:慶應義塾大学 信濃町キャンパス(慶應義塾大学病院)2号館11階 大会議室
(〒160-8582 東京都新宿区信濃町35) >>マップ - 形式:対面開催(オンライン配信なし)
- 言語:日本語・英語(同時通訳あり)
- 参加費:無料
- 定員:約60名(慶應義塾大学や近隣大学の学生、高校生、AMR研究に関心のある研修医、研究者や医療関係者等)
- 主催:
日本医療政策機構(HGPI)
AMRアライアンス・ジャパン
慶應義塾大学 医学部 感染症学教室 - 協力:
GARDP(Global Antibiotic Research and Development Partnership)
国⽴健康危機管理研究機構 国⽴国際医療センター AMR臨床リファレンスセンター
【プログラム】(敬称略・順不同)
18:00-18:05 開会挨拶・趣旨説明
河野 結(日本医療政策機構 マネージャー/AMRアライアンス・ジャパン)
18:05-18:15 講演1「Tackling AMR: Think Globally, Act Locally」
南宮 湖(慶應義塾大学 医学部 感染症学教室 教授)
18:15-18:30 講演2「AMRにおけるDiagnostic Stewardship」
上蓑 義典(慶應義塾大学 医学部 臨床検査医学教室 専任講師)
18:30-19:00 講演3「抗菌薬の研究と公平なアクセス-臨床医学、薬学や微生物学の知見を国際社会に届ける」(仮)
ジェニファー・コーン(GARDP グローバルアクセス部門ディレクター)
19:00-19:25 質疑応答
19:25-19:30 閉会挨拶
長谷川 直樹(横浜市立市民病院 統括副院長)
南宮 湖(慶應義塾大学 医学部 感染症学教室 教授)
【登壇者プロフィール】
ジェニファー・コーン(GARDP グローバルアクセス部門ディレクター)
ジェニファー・コーンは、低・中所得国での医療製品や医療モデルのアクセスと普及の向上に取り組む感染症専門の医師です。現在、グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ(The Global Antibiotic Research & Development Partnership:GARDP)でグローバルアクセス部門ディレクターを務めるとともに、ペンシルベニア大学医学部グローバルヘルスセンターの感染症学臨床准教授および研究員を兼任しています。
GARDPに参加する前は、Resolve to Save Livesで心血管疾患担当シニアバイスプレジデント、エリザベス・グレイザー小児エイズ財団でイノベーション担当シニアディレクター、国境なき医師団(MSF)アクセスキャンペーンの医療調整役を歴任しました。また、結核、HIV、非感染性疾患、ウイルス性肝炎に関する国際諮問グループにも参加しています。
これまでに査読付き医学雑誌に90本以上の論文を発表しています。ペンシルベニア大学で医学博士号(MD)を取得し、米国内科医認定機構(American Board of Internal Medicine)により内科および感染症の専門医として認定されています。さらに、ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生大学院で公衆衛生学修士号(MPH)を取得しています。
南宮 湖(慶應義塾大学 医学部 感染症学教室 教授)
南宮 湖(なんぐん ほう)は、呼吸器感染症、特に非結核性抗酸菌症(NTM)およびCOVID-19に関するトランスレーショナルリサーチを専門とする感染症医です。現在、慶應義塾大学医学部感染症学教室 教授、および同大学病院 臨床感染症センター長を務め、感染症制圧に向けた学際的かつ国際的な研究基盤の構築に尽力しています。慶應義塾大学医学部を卒業後、総合病院国保旭中央病院にて臨床研修を修了し、2018年より米国国立衛生研究所/国立アレルギー・感染症研究所(NIH/NIAID)にて呼吸器感染症の疾患感受性遺伝子の研究に従事し、2020年にはジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生大学院で公衆衛生学修士号(MPH)を取得しています。
COVID-19パンデミック下では「コロナ制圧タスクフォース」の事務局を務め、国内最大規模のコホート研究およびゲノム解析を主導しました。現在は、ネクストパンデミックに備える「ネクストパンデミック・タスクフォース」を率い、臨床情報、バイオバンク、多層オミックス解析を統合した研究体制の構築を推進しています。
また、NTMに関しては国際共同研究コンソーシアムを主導し、近年ではアジア・アフリカの研究機関との連携を通じたグローバルリサーチにも積極的に取り組んでいます。
上蓑 義典(慶應義塾大学 医学部 臨床検査医学教室 専任講師)
上蓑 義典は、慶應義塾大学病院微生物検査室の責任者としてその運営にあたるとともに、感染制御部副部長として院内感染管理および感染症診療に従事する感染症専門医として、臨床の第一線で活動しています。
微生物検査室においては、臨床微生物検査の自動化・迅速化など、先駆的な検査診断体制の構築を進めると同時に、感染症専門医の視点から不要な検査の合理化にも取り組んでいます。さらに、微生物検査室の特性を活かし、さまざまな臨床研究およびトランスレーショナル研究を展開しています。
長谷川 直樹(横浜市立市民病院 統括副院長)
長谷川 直樹は、呼吸器感染症、特に抗酸菌感染症(結核および非結核性抗酸菌症)に関する臨床および研究の分野を長年にわたり牽引してきました。前日本感染症学会理事長として、日本における感染症医療の発展と人材育成に多大な貢献を果たしてきました。
前慶應義塾大学医学部感染症学教室 教授としては、呼吸器感染症に関する基礎研究・臨床研究・疫学研究を幅広く推進し、とりわけ抗酸菌感染症においては、診療ガイドラインの整備や教育・啓発活動にも尽力してきました。また、医師主導の臨床研究を数多く主導し、日本の感染症領域におけるトランスレーショナルリサーチの基盤構築にも寄与しています。指導者としても卓越しており、これまでに多くの優秀な若手医師・研究者を育成し、国内外の感染症分野において活躍する人材を輩出してきました。
■日本医療政策機構(HGPI: Health and Global Policy Institute)
HGPIは、2004年に設立された非営利・独立・超党派の医療政策シンクタンクです。中立的な立場から、幅広い分野のステークホルダーを巻き込み、市民主体の医療政策を実現するための選択肢を社会に提案しています。HGPIは未来を見据え、広い視野から新たな価値とアイデアを創出し、政治的・組織的な利害関係にとらわれることなく、公正で健やかな社会の実現を目指しています。また、日本国内のみならず国際的にも効果的な政策提言を行うことを目指し、グローバルヘルス課題の解決に向けて積極的に活動を続けています。なお、HGPIの活動は国際的にも評価されており、ペンシルベニア大学が発表する「Global Go To Think Tank Index Report」(2021年1月時点)では、「国内医療政策シンクタンク」部門で第2位、「グローバル医療政策シンクタンク」部門で第3位にランクインしています。
■AMRアライアンス・ジャパン
AMRアライアンス・ジャパンとは2018年11月に設立した、AMR対策をマルチステークホルダーで議論する独立したプラットフォームです。2025年6月現在の構成メンバーは、グラクソ・スミスクライン株式会社、「子どもと医療」プロジェクト、塩野義製薬株式会社、島津ダイアグノスティクス株式会社、動物用抗菌剤研究会、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社、日本医師会、日本医真菌学会、日本医療薬学会、日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本感染症学会、日本小児感染症学会、日本製薬工業協会、日本TDM学会、日本病院薬剤師会、日本薬学会、日本薬剤師会、日本臨床微生物学会、ビオメリュー・ジャパン株式会社、姫路市、ファイザー株式会社、Meiji Seika ファルマ株式会社、Merck & Co., Inc.、日本医療政策機構(事務局)です。
■慶應義塾大学 医学部 感染症学教室
慶應義塾大学医学部感染症学教室では、基礎と臨床が一体となったユニークな教室体制のもと、臨床検体を用いた研究をはじめ、さまざまな感染症研究を推進しています。コロナ禍においては、100以上の病院と共にCOVID-19のトランスレーショナル研究を進めてまいりました。また、慶應義塾大学病院感染制御部および臨床感染症センターとの強固な連携により、院内感染対策や抗菌薬適正使用といった、病院機能の要となる取り組みを先進的に推進しています。今後も感染症学教室では感染症専門医育成の場として、創薬やワクチン開発に貢献する感染症治験・臨床研究のハブとして、日本・アジア・世界において中核的な役割を果たすよう取り組んでいきます。
■グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ(GARDP: Global Antibiotic Research and Development Partnership)
グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ(GARDP(ガードピー))は、公衆衛生上の深刻な問題のひとつである薬剤耐性菌感染症の増加と蔓延から人々を守るために活動する非営利のグローバルヘルス組織です。私たちは、官民パートナーシップを通じ、抗菌薬を必要とする人々のために抗菌薬および抗菌治療法を開発し、利用できるようにしています。私たちの活動は、カナダ、ドイツ、日本、モナコ、オランダ、スイス、英国、ジュネーブ州政府、欧州連合(EU)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、グローバルヘルスEDCTP3、GSK、RIGHT財団、南アフリカ医学研究評議会(SAMRC)、ウェルカム財団からの支援で支えられています。GARDPは、GARDP財団という法人名でスイスで登録されています。https://gardp.org(日本語情報有り)
■国⽴健康危機管理研究機構 国⽴国際医療センター AMR臨床リファレンスセンター
AMR臨床リファレンスセンターは、薬剤耐性(AMR)対策アクションプランに基づく取り組みを行う目的で、厚生労働省の委託事業として2017年4月に設立されました。AMR対策アクションプランに基づき、医療従事者や国民向けの教育啓発活動に取り組み、研修会の実施、資材の作成やウェブサイトなどでの情報提供、e-learningによる学習機会の提供を行っています。また、医療施設内での感染症や感染対策、抗菌薬使用量などAMRに関連したサーベイランスのプラットフォームを構築し、サーベイランスを実施するとともに、地域連携を支援しています。AMRについて十分に解明されていないことも多くあり、より効果的なAMR対策を確立するための研究も進めています。