【開催報告】HGPI-東京大学 共同講義「One Health, One Planet – 持続可能な未来に向けたAMR対策」(2025年6月24日)
日本医療政策機構(HGPI)、AMRアライアンス・ジャパン、東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室(GHP: the Department of Global Health Policy)は、「One Health, One Planet – 持続可能な未来に向けたAMR対策:人・動物・環境の健康と持続可能な解決策のつながりを理解する」と題した共同講義を開催しました。
今回は、国際薬剤耐性対策センター(ICARS: International Centre for Antimicrobial Resistance Solutions)科学ディレクターのKristina Osbjer氏をお招きし、薬剤耐性(AMR)に関する学際的な理解を深めるとともに、ヒト・動物・環境の健康が相互に依存しているというワンヘルスの視点から、AMR対策における多部門連携の必要性についてご説明いただきました。
講義では、AMRをプラネタリーヘルスの視点から捉え、ヒト・動物・環境の健康に加え、食料システムや持続可能性がいかに密接に関わり合っているかが示されました。また、農業における抗菌薬の過剰使用、水環境における医薬品残留物による汚染、生物多様性の喪失等の課題が、世界でAMRの拡大を助長していることにも触れられました。
Osbjer氏は、低・中所得国(LMICs: Low and Middle Income Countries)における15年以上の実務経験に基づき、科学的知見と政策・地域レベルでの実践をどのように統合していくかについて、具体的な事例や戦略をご紹介くださいました。
参加者は、AMRの構造的な課題に目を向けるとともに、分野を越えた協働と連携の必要性について考える機会となりました。また、AMRは単なる臨床の課題ではなく、気候変動、持続可能な開発、健康の公平性とも交差する「国際公共財(Global Public Good)」に関わる問題であることが改めて認識されました。
講義を通じて、参加者は新たな視点と学びを得るとともに、ネットワークを強化し、それぞれの立場から協働的な解決策を推進するための意識を一層高める機会となりました。
【開催概要】
- 日時:2025年6月24日(火)15:00-16:30
- 形式:対面のみ
- 会場:東京大学(本郷キャンパス)医学系研究科教育研究棟13階第6セミナー室 #1304A
(東京都文京区本郷7-3-1) - 言語:英語(同時通訳なし)
- 参加費:無料
- 主催:日本医療政策機構(HGPI)
AMRアライアンス・ジャパン
東京⼤学⼤学院医学系研究科 国際保健政策学教室 - 協力:国際薬剤耐性対策センター(ICARS)
【プログラム】(敬称略)
15:00-15:05 開会挨拶・趣旨説明
河野 結(日本医療政策機構 マネージャー/AMRアライアンス・ジャパン)
15:05-15:35 基調講演「One HealthとAMR -低中所得国の視点から」
Kristina Osbjer(国際薬剤耐性対策センター(ICARS: International Centre for Antimicrobial Resistance Solutions)科学ディレクター)
15:35-16:00 質疑応答
16:00-16:05 閉会挨拶
Vera Phung Ling Hui(東京大学 大学院医学系研究科 国際保健政策学教室)
16:05-16:30 ネットワーキング
■登壇者プロフィール
Kristina Osbjer(国際薬剤耐性対策センター(ICARS: International Centre for Antimicrobial Resistance Solutions)科学ディレクター)
Kristina Osbjer氏は、ICARSの科学ディレクターを務めている。彼女は獣医疫学の専門家であり、15年以上にわたり、低・中所得国における研究、能力強化、そしてAMRを含む新たな健康脅威への対応に携わってきた。スウェーデン農業科学大学にて獣医学(DVM: Doctor of Veterinary Medicine)およびOne Health(ワンヘルス)と人獣共通感染症に関する博士を取得している。過去には、国連食糧農業機関(FAO: Food and Agriculture Organization)においてAMRおよび動物の健康に関するチームリーダーを務め、AMR対策や感染症対策に関して、各国政府や四機関連携(the Quadripartite)と緊密に連携してきた。アジア地域での駐在経験も豊富で、地域に根ざした実務経験を有している。