日本医療政策機構（HGPI）と東京大学は、「One Health, One Planet – 持続可能な未来に向けたAMR対策：人・動物・環境の健康と持続可能な解決策のつながりを理解する」をテーマに、共同講義を開催します。

薬剤耐性（AMR）は、現代医療の根幹を揺るがし、感染症治療や公衆衛生の維持に深刻な影響を及ぼす世界的な課題です。AMRは、医療や薬学の課題として語られがちですが、実はプラネタリーヘルス（地球規模の健康）とも密接に関わっています。耐性菌の増加は、環境破壊、持続可能ではない農業慣行、汚染、気候変動など、医療の枠を超えた様々な要因によって加速しており、環境や社会全体の課題となっています。

本講義では、AMRをプラネタリーヘルスの視点から捉え、健康・農業・環境・持続可能性のつながりを多角的に考察します。農業分野における抗菌薬の過剰使用、医薬品残留物による水環境の汚染、生物多様性の喪失などが、AMRの深刻化にどのように影響しているかを参加者とともに学びます。特に、ヒト・動物・環境の健康が相互に依存しているという「One Health（ワンヘルス）」の理念に基づく分野横断的な解決策の必要性に注目します。

当日は、国際薬剤耐性対策センター（ICARS: International Centre for Antimicrobial Resistance Solutions）の科学ディレクターであるKristina Osbjer氏をお迎えします。Osbejer氏からは、最新の研究成果、政策的な取り組み、持続可能な解決策の実践、そしてAMR対策と環境の持続可能性の両立に向けた知見をご共有いただきます。多部門が連携して、分野横断的にOne Healthの取り組みを行う重要性についても説明します。また、分野を越えた対話を通じて、参加者が将来のキャリアにおいて革新的な解決策を生み出すための知識と視点を得る機会を目指します。本講義を通じて、医療専門家、環境科学者、政策立案者、若手リーダーが協働することで、AMRをプラネタリーヘルスの課題として捉え、次世代の変革を担う皆様と共に議論を深めます。

【開催概要】

• 日時：2025年6月24日（火）15:00-16:30
• 形式：対面のみ
• 会場：東京大学（本郷キャンパス）医学系研究科教育研究棟13階第6セミナー室 #1304A
  （東京都文京区本郷7-3-1）
• 言語：英語（同時通訳なし）
• 参加費：無料
• 主催：日本医療政策機構（HGPI）
  AMRアライアンス・ジャパン
  東京⼤学⼤学院医学系研究科 国際保健政策学教室
• 協力：国際薬剤耐性対策センター（ICARS）

 

申込期日：2025年6月20日（金）15:00

 

【プログラム】（敬称略）

15:00-15:05 開会挨拶・趣旨説明

河野 結（日本医療政策機構 マネージャー／AMRアライアンス・ジャパン）

15:05-15:35 基調講演「One HealthとAMR －低中所得国の視点から」

Kristina Osbjer（国際薬剤耐性対策センター（ICARS: International Centre for Antimicrobial Resistance Solutions）科学ディレクター）

15:35-16:00 質疑応答

16:00-16:05 閉会挨拶

Vera Phung Ling Hui（東京大学 大学院医学系研究科 国際保健政策学教室）

16:05-16:30 ネットワーキング

 

■登壇者プロフィール

Kristina Osbjer（国際薬剤耐性対策センター（ICARS: International Centre for Antimicrobial Resistance Solutions）科学ディレクター）

Kristina Osbjer博士は、ICARSの科学ディレクターを務めている。彼女は獣医疫学の専門家であり、15年以上にわたり、低・中所得国における研究、能力強化、そしてAMRを含む新たな健康脅威への対応に携わってきた。スウェーデン農業科学大学にて獣医学（DVM: Doctor of Veterinary Medicine）およびOne Health（ワンヘルス）と人獣共通感染症に関する博士を取得している。過去には、国連食糧農業機関（FAO: Food and Agriculture Organization）においてAMRおよび動物の健康に関するチームリーダーを務め、AMR対策や感染症対策に関して、各国政府や四機関連携（the Quadripartite）と緊密に連携してきた。アジア地域での駐在経験も豊富で、地域に根ざした実務経験を有している。