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【政策提言】骨太の方針2025策定に対する提言 薬剤耐性(AMR)対策の促進に向けて(2025年5月29日)

AMRアライアンス・ジャパン(事務局:日本医療政策機構)は、薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)対策を更に推進するため、「経済財政運営と改革の基本方針2025」(骨太の方針2025)に以下の文言を盛り込むことを提言いたしました。

  • 薬剤耐性対策にあたっては、市場インセンティブの見直しや拡充を通じた抗菌薬の確保及び研究開発を産官学民で議論及び推進し、国益と国際益の両立を図りながら、国際社会において主導的な役割を果たす。
  • また、経済安全保障上の重要課題として、MCM(感染症危機対応医薬品)である抗菌薬の原薬確保や診断薬等の生産体制、安定供給等の強化を確実に進める。
  • 医療DXの推進と調和を取りながら、正確な疫学サーベイランスデータの収集と迅速な分析体制を拡充させることで、ワンヘルス・アプローチに基づく感染症対策を推進する。


英医学誌「Lancet」の報告によれば、AMRが直接起因する世界の年間推定死亡者数(2024年)は191万人にのぼり、HIV/AIDS、マラリアの死者数を上回ることが明らかになっています。日本でも、数ある薬剤耐性菌による感染症のうち、血流感染症により年間約40,000人が死亡していると推定されており(2024年)、薬剤耐性全体の被害規模は極めて大きいと考えられます。

国内経済安全保障の観点からも、感染症危機対応医薬品(MCM)の安定供給や研究開発、創薬力の強化等が急務です。なかでも、細菌感染症の予防・診断・治療は保健医療システムの基盤です。2025年9月に国連総会で議論予定の非感染性疾患(NCD)に関する政治宣言(案)でも、がん等の慢性疾患治療における薬剤耐性の脅威が既に指摘されており、社会全体で抗菌薬の有効性を確保しつづける重要性が述べられています。

くわえて、薬剤耐性対策は、人間、動物、食品、環境にまたがる複雑な課題となっています。そのため、ワンヘルス・アプローチに基づいた分野横断的な連携とともに、社会課題として国・自治体間や、医療機関同士の連携等が必須です。そのためにも、医療DXの推進等と調和の取れた効果的なサーベイランス体制は重要です。

骨太の方針では、2016年以降、毎年「薬剤耐性(AMR)対策の推進強化」や「研究・検査・治療体制の充実」等が盛り込まれ、産官学民が一体となってAMR対策の進展を支えてきました。今後は、これまでの成果を基盤とし、さらに実効性の高い取り組みの推進が期待されます。

国際社会でも、2024年9月に採択されたAMRに関する政治宣言に基づき、2025年内のAMRに対する行動のための独立エビデンスパネル設立、2026年予定のAMRに関するグローバル・アクション・プラン改定等、科学的なエビデンスに基づくAMR対策が加速する見通しです。同宣言では、薬剤耐性に対処するための多分野にわたる健康研究開発のための革新的なインセンティブと資金調達メカニズムの範囲を探求し、奨励し、促進することがコミットされています。

薬剤耐性を含む感染症対策は、自国あるいは特定の領域のみでは完結しません。次世代のための持続可能な感染症対策の基盤を確立し、国内及び国際社会における責務と貢献を果たすことが重要です。

<政策提言>骨太の方針2025策定に対する提言 薬剤耐性(AMR)対策の促進に向けて
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