【活動報告】AMRに関する国連ハイレベル会合に向けたマルチステークホルダーヒアリング(2024年5月15日)
日本医療政策機構は、AMRに関する国連総会ハイレベル会合に向けたマルチステークホルダーヒアリングにおいて、公式に認可・招待された参加者としてステートメントを提出しました。
マルチステークホルダーヒアリングは2024年9月開催の国連総会ハイレベル会合に向けた準備会合の1つとして、国連総会事務総長が主催しています。同ヒアリングは四機関連携(Quadripartite)として知られる、世界保健機関(WHO:World Health Organization)、国際連合食糧農業機関(FAO: Food and Agriculture Organization)、国際連合環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme)及び国際獣疫事務局(WOAH:World Organisation for Animal Health)と、関連機関による支援のもと、2023年から2024年にかけて実施された第78回国連総会で採択された決議78/269に基づいて開催されました。
ステートメントのポイント
- AMRは医療システムの構造的な課題であり、疾病横断的な課題でもある。特定の疾病対策に比重が置かれた垂直的な国際パートナーシップの活動にもAMR対策の視点を統合し、AMR対策に人的・金銭的な資源を配分する必要がある。
- 国際社会は気候変動対策やESG投資の動きから学び、民間金融機関をAMR対策のパートナーとして認識し、連携する必要がある。
- AMRはヒト・動物・環境にまたがる領域横断的な課題でもあり、科学的な議論に基づくワンヘルスアプローチが重要である。「Health in All Policies(すべての政策に健康の視点を)」と同様、「AMR in All Policies」の発想に基づいた領域・部門横断的な取り組みが期待される。
- 特に、領域・部門横断的なAMR対策を推進するうえで、国際社会、地域、国家、コミュニティの役割だけではなく、地方自治体の役割を特定する必要がある。
- 抗菌薬の適正使用及びアクセスとの調和を念頭においたうえで、プッシュ型インセンティブ及びプル型インセンティブの導入を通じて抗菌薬の研究開発を促進する必要がある。また、抗菌薬の適正使用は検査の果たす役割が大きい。検査・診断支援の促進は2023年の第76回世界保健総会で採択された決議WHA76.5「検査・診断支援キャパシティの強化に関する決議(Strengthening diagnostics capacity)」との関連を考慮する必要がある。
- AMRを含む感染症領域の人材育成及びキャパシティビルディングを急ぐ必要がある。感染症の創薬研究者、感染症専門医、感染症医薬品や検査機器・試薬を扱う企業の減退や頭脳流出は国際社会の喫緊の課題である。
(写真:英国抗菌化学療法学会(British Society for Antimicrobial Chemotherapy))