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【活動報告】国内外の薬剤耐性(AMR)の現状と対策に関するポリシー・ブリーフ(2020年11月20日)

抗菌薬は現代医療の大黒柱です。1928年のペニシリンの発見以来、抗菌薬は世界中で感染症から数えきれないほどの命を救い、また非感染性疾患(NCDs: Non-communicable Diseases)の治療にも貢献してきました。

しかし、人類が抗菌薬を使用すればするほど、感染症を引き起こす微生物はその環境に適応し、薬剤耐性を獲得していきます。これは「薬剤耐性(AMR: Antimicrobial Resistance)」と呼ばれる自然発生的な過程です。このまま何も対策が取られなければ、現時点では治療ができる疾病であったとしても、AMRによって治療の選択肢が減少し、いずれは多くの人々が亡くなる社会に逆戻りする可能性があります。

既に日本ではAMRにより年間8000人もの命が失われていると推定されています。これは交通事故による年間死亡者数の2倍に相当します。なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19:Coronavirus Disease 2019)による国内死亡者数は、1913 人です(2020年11月18日現在)。 また、毎年、世界でも少なくとも約70万人もの人が薬剤耐性菌感染症により死亡していると考えられています。さらに、2050年までに、世界では毎年、1000万人がAMRによって死亡する可能性があるとされています。

AMRの拡大を止めるべく、既に様々な対策が講じられています。AMRアライアンス・ジャパン(事務局:日本医療政策機構)も長年、AMRをとりまく課題に対して、政策提言を中心に多方面からアプローチをしてまいりました。

2020年度は、「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2021~」に求められる事項や、国内の薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)に関するサーベイランス・システムの強化に関する提言を公表し、AMRアライアンス・ジャパンのウェブサイト上では国内外のAMRに関する情報をまとめたリソースページを公開いたしました。また、現在は、抗菌薬市場の課題を解決し、新規抗菌薬の研究開発を促進するためのプル型インセンティブに関する提言書をとりまとめるとともに、診療報酬制度を通じたAMR対策の促進や啓発・学修支援活動にも取り組んでいます。

世界では11月18日から11月24日までが世界抗菌薬啓発週間(WAAW:World Antibiotic Awareness Week)、そして日本では11月1日から11月30日までが薬剤耐性(AMR)対策推進月間にあたります。この機会に、改めてAMR対策の重要性を理解し、私たちがとるべきアクションを見定め、実行に移していかなければなりません。世界中で感染症や危機管理、安全保障について意識が高まっている今だからこそ、できることがあるでしょう。

そこで、AMRアライアンス・ジャパンは、国内外の薬剤耐性(AMR)の現状と対策に関するポリシー・ブリーフを公表いたします。

本ポリシー・ブリーフ(日・英)は、下記7章から構成されています。

  1. 医療現場の現状を踏まえた抗菌薬の適正使用の推進
  2. 国内のAMRに関する危機の管理及びサーベイランス・システムの構築
  3. 積極的な耐性菌スクリーニング検査及び迅速診断検査等を実施しやすい体制の整備
  4. 国民及び医療従事者へのAMRに関する学修支援の整備
  5. 抗菌薬開発を促進するインセンティブ・モデルの策定
  6. 抗菌薬の安定供給
  7. 国内外の好事例や教訓を共有するための国際連携

 

本ポリシー・ブリーフが日本および世界のAMR対策と啓発の一助となることを願いながら、AMRアライアンス・ジャパンは引き続きAMR対策を推進してまいります。

 

 

 

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